Skip to content
食の安全と未来を追求する 株式会社典座。顧客と従業員を大切にする経営の秘訣

2025年07月29日

株式会社典座

食の安全と未来を追求する 株式会社典座。顧客と従業員を大切にする経営の秘訣

株式会社典座は、長年にわたり食の安全と品質にこだわり、地域に根差した食事提供を通じて社会に貢献してきた企業です。私たちは主に企業向けの社員食や介護福祉施設・デイサービスの利用者様へのお弁当提供を手掛けています。日本の健康的な食事スタイルや京都の食文化を伝える「食育」の役割も担っており、HACCPに基づいた衛生管理体制を導入し、微酸性電解水を使用するなど、徹底した安全管理を追求しています。京都市伏見区に拠点を持ち、小規模ながらも家庭で親が子を思うような優しさあふれる食事を届け、経験豊富な管理栄養士が栄養バランスを考慮したメニュー作りを行っています。今回は、地域に根差した食の提供と徹底した衛生管理体制、そして“家庭のぬくもり”を大切にしたお弁当作りの背景や、今後の展望について、代表取締役社長の皆さまにじっくりとお話をお伺いしました。

<聞き手=石嵜渉(学生団体GOAT編集部)>


佐藤様の今までの経緯・背景】

株式会社典座は、約53年前に私の祖母が創業し、その後、私の父が株式会社として事業を継承しました。私自身は元々サラリーマンとして会社とは別の仕事をしていましたが、あるきっかけで会社に戻ることになり、営業職を経て約10年前に社長に就任しました。

社長就任前は、正直なところ、自分が社長になることや家業を継ぐことは考えていませんでした。社長就任にあたっては、中小企業における後継者不足や、ほとんどの会社が借入れをして事業を運営している現状から、外部の人間や従業員が事業を引き受けることが難しいという状況があり、プレッシャーや葛藤を感じました。しかし、事業を動かし続けなければ会社が立ち行かず、従業員やお客様に迷惑をかけてしまうという思いが強く、社長としての道を歩むことを決断しました。

社長になる前から新しい事業に取り組む機会があり、その中で構成を決めたり、新しい事業を立ち上げたりすることに面白さを感じていました。もちろん、その中には失敗した経験もありますが、新しい挑戦をすることの面白さが私の原動力になっています

取材担当者(石嵜)の感想

佐藤社長がサラリーマンから家業の社長へと転身された背景には、単なる事業承継だけでなく、中小企業が抱える社会課題と、それに対する社長自身の強い使命感が感じられました。

特に、プレッシャーを感じながらも「事業を止めない」という責任感と、新しい挑戦への「面白さ」を見出す柔軟な思考は、まさにリーダーシップの真髄だと思います。自身のキャリアパスを自ら切り拓き、失敗を恐れずに挑戦する姿勢は、私のような若手にも大きな学びとなります。

取材担当者(石嵜)の感想

【株式会社典座の事業・業界について

現在、株式会社典座の主要事業は、企業向けの社員食や介護福祉施設・デイサービス向けの弁当製造です。その他にも、ふるさと納税に活用される商品や、通販会社からの依頼で食材を確保・流通させる業務など、多岐にわたる事業を展開しています。私たちは、お客様に満足していただくこと、そしてその対価をしっかりといただくことを経営において最も重視しています

特に食品業界では、産地偽装、劣悪な労働環境、賞味期限切れ商品の流通といった問題が過去には見受けられました。当社ではそうした問題がないよう、お客様に安全な食事を届けることを最重要視しています。創業以来50年以上にわたり事業が継続している秘訣としては、「誠実に事業を行ってきたこと」と「お客様に恵まれたこと」、そして「人とのつながりや信頼関係」を挙げることができます。

食を扱う業界では、人手不足が深刻な課題であり、当社も例外ではありません。この課題に対応するため、特定技能や技能実習生といった外国人材の活用に力を入れています。現在従業員数は150名程度ですが、その中で外国人従業員の比率が増加しています。特にベトナム出身の大学卒業生などは仕事が早く、非常に優秀な人材も多いと評価しており、労働力が必要な業界であるため、外国人材に頼らざるを得ない現状があると感じています。外国人材をいかに「戦力化」するかが、今後の経営の鍵となると考えています。

外国人材が日本で働くための制度について、技能実習生は期間が限定されていますが、試験に合格すれば特定技能の資格を取得でき、その後5年間働くことが可能になります。さらに特定技能2号の資格を取得し、日本語の試験に合格すれば、家族の帯同や在留期間の延長も可能となり、日本に生活基盤を築く選択をする外国人材も増えています。彼らは日本の医療制度や子どもの教育に関心を持つ傾向があるようです。

取材担当(石嵜)の感想

典座の事業は、単に食事を提供するだけでなく、食の安全と品質に徹底的にこだわり、お客様との信頼関係を築くことで長年にわたり成長してきたことがよく分かりました。特に、食品業界が抱える課題に対し、誠実さと透明性をもって向き合う姿勢は、社会貢献の面からも非常に魅力的です。

また、深刻な人手不足という社会課題に対し、外国人材の活用を戦略的に進め、彼らを単なる労働力としてではなく「戦力」として育成しようとする姿勢は、企業が持続的に成長していく上で不可欠な視点だと感じました。

取材担当(石嵜)の感想

【佐藤様から学生へのメッセージ】

若い世代の皆さんには、「海外に出て、日本と海外では考え方が全く違ってくる」と伝えたいです。若いうちに海外に出て様々な経験をすることは、たとえ失敗しても日本に戻ってこられる場所があるため、視野を広げる上で非常に有効であると考えています。

特にベトナムなど、経済成長が著しい国々を例に挙げると、わずか10年で風景が劇的に変化する様子は、日本の現状と比較しても経済の伸びを肌で感じられます。中国の人々が何もないところから商売を広げていく姿も挙げられるように、海外に飛び出すことの重要性は非常に高いと感じます。

日本国内に目を向けると、人口減少が確実な未来としてあります。その中で事業を構築していくためには、日本国内だけでなく、世界に目を向けることが不可欠だと考えています。過去と現在、そして未来を比較すると、私たちの生活環境は急速に変化しており、これからも常に時代に合わせて変化していくしかないと私は感じています。固定電話の時代からスマートフォンへの変化、そしてその先の未来も予想できない中で、常に変化に対応する重要性を理解してほしいです。

取材担当(石嵜)の感想

佐藤社長の「海外に出て視野を広げろ」というメッセージは、まさに私たちZ世代に響く言葉だと感じました。変化の激しい現代において、グローバルな視点と変化への適応力がいかに重要か、改めて認識させられました。

日本国内の人口減少という現実を踏まえ、未来のキャリアを考える上で、海外に目を向けることの重要性は計り知れません。社長ご自身が海外に赴き、その目で世界の変化を捉えているからこその、説得力あるアドバイスだと感じました。

取材担当(石嵜)の感想

【株式会社典座の今後の展望

今後の事業ビジョンについて、5年後、10年後の未来を見通すことは難しいと私自身は感じています。しかし、日本が少子高齢化社会へと向かう中で、高齢者層への食事提供は確実に重要なマーケットであり、そこに貢献していくことが当社の真価になると考えています

また、国内市場だけでなく、海外展開や、これまでのBtoBビジネスに加え、消費者向けのBtoC事業への進出も視野に入れています。具体的には、冷凍食品やレトルト食品といった分野を取り入れることを検討しており、既に京都の企業と共同でのBtoC事業立ち上げの話し合いも一部進んでいます。大手通販会社との連携も模索しており、自社単独でのBtoC市場開拓が難しい現状を踏まえ、既存の顧客基盤を持つパートナーとの協業を通じて、新たな活路を見出していきたいと考えています。

取材担当(石嵜)の感想

不確実な未来を見据えつつも、日本の高齢化社会という明確なニーズに応えるという社長のビジョンは、非常に地に足がついていて、かつ社会貢献性も高いと感じました。

既存の強みを活かしつつ、BtoC市場への挑戦や冷凍・レトルト食品への展開、さらには他社との協業を通じて成長を模索する姿勢は、常に進化し続ける企業の姿を示しています。特に、変化を恐れず、戦略的に新たな道を切り拓こうとする姿勢は、企業の持続的な成長において不可欠な要素だと強く感じました。

取材担当(石嵜)の感想