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子どもの笑顔を育む挑戦とホテル業界の未来

2025年08月19日

有限会社 旅館初音荘新館

子どもの笑顔を育む挑戦とホテル業界の未来

嬉野温泉に位置する旅館「初音荘」は、「お子様連れ専門」という独自のコンセプトで、家族旅行に特化したホスピタリティを提供しています。親子の笑顔と安心を追求し、全ての子供たちに旅の夢を届けることを使命としています。今回は、「お子様連れ専門」という挑戦の原点と、家族旅行の未来を拓く宿づくりのビジョンについて、旅館初音荘 副社長様にじっくりとお話を伺いました。

<聞き手=高橋宏輔(学生団体GOAT編集部)>


【ホテル・旅館業界への尽きぬ情熱と入社の背景】

私は中学時代から観光業界に魅せられ、大学で観光学を専攻。都内の外資系ホテル勤務を経て、現在の会社へ転じました。原動力は、「ホテル・旅館を自ら作りたい」という夢と、「全国に数多く存在するホテル・旅館が減っていくのを食い止めたい」という強い使命感にあります。

日本のホテル・旅館業界は、多くの従業員を抱えながらも、特に地方では経営が難しいケースが多く、毎年数百件もの施設が廃業しています。しかし、この仕事が「人が人を幸せにできる素晴らしい仕事」であると確信しています。お客様の滞在が一生の思い出となることへの喜びは計り知れません。

この「人を幸せにできる仕事」と「経営の厳しさ」というギャップを解消し、業界の持続に貢献したいという思いが、転職と現在の役割を担う大きな理由です。初音荘の他にも、ホテル・旅館の運営会社であるプランアクトの副代表も兼務し、複数の施設運営に携わっています。

取材担当(高橋)の感想

業界の構造的な課題を深く理解し、単なる利益追求ではなく「人を幸せにする」という本質的な価値を守るために行動されていることに感銘を受けました。この熱い思いは、私たち就活生にとっても働く意味を考える上で大きな学びです。

取材担当(高橋)の感想

【家族の絆を深める「初音荘」の独自の工夫】

初音荘は佐賀県嬉野温泉の、高齢化が進む地域にありながら、「お子様連れ専用」を徹底しています。スタッフは平均年齢が高いものの、皆が子どもを愛し、お客様のお子様を自身の孫のように接することで、通常の接客を超える喜びを享受しています。

集客戦略は「表の強み」と「裏の要素」の二軸です。大人1名につき未就学のお子様1名の宿泊・食事が無料になるサービスや、アレルギー対応を考慮した無料の「離乳食バイキング」を明確に提示。これは、親御様自身が子育て経験で培った知識を活かせる逆張りの発想から生まれました。

もう一つの「裏の要素」は、宿泊して初めて体験できる、多数のイベントや企画です。幅広い年齢のお子様が楽しめる仕掛けが館内に散りばめられ、これが総合的な満足度を高めています。また、築40年の古い外観と、リノベーションされた美しい内装とのギャップも、お客様に驚きと感動を与える意図的な工夫です。

取材担当(高橋)の感想

「お子様連れ専用」という徹底したコンセプトと、それを支える「離乳食バイキング」のような細やかな配慮、さらに「外観と内装のギャップ」という大胆な戦略に圧倒されました。お客様の期待を超える体験を提供するための深い洞察力に、多くの学びを得ました。

取材担当(高橋)の感想

【世代間の価値観を繋ぐ人材育成とサービスの追求】

初音荘の大きな課題は、平均年齢の高いスタッフと20〜30代の若い親御様という世代間のギャップです。子育てやサービスに対する価値観の違いは、人材育成において常に意識すべき点です。

この課題に対し、当館では日々のトレーニングやケーススタディを重視しています。例えば、「お子様の頭を撫でる行為は禁止」といった具体的なルールや、親御様が食事中に泣き出したお子様を仲居があやすといった、他では見られない対応も、お客様の現代的価値観に合わせたものです。これは、多様なニーズに柔軟に対応するための継続的な取り組みです。

取材担当(高橋)の感想

プランアクトグループの他施設では、若いスタッフが中心で、海外からのお客様が8割を超える場所もあります。そこでは、異なる文化や習慣を持つお客様への対応が求められ、多様な経験がスタッフの成長を促しています。

取材担当(高橋)の感想

【情報過多時代を生きる若者へのメッセージ】

今の20代、いわゆるZ世代の強みは、インターネットを通じて世界中の情報に触れられることにあります。だからこそ、非常に広い視野と高い感性を持っていると感じており、私はその感性こそが、将来新しいホテルやサービスを生み出す原動力になると大いに期待しています。

ただし、情報が簡単に手に入る時代だからこそ、「その情報が本当に正しいのか」を見極める力が求められます。特にサービス業に関しては、「給料が安い」「きつい」といったネガティブな情報が流布しやすい傾向にありますが、それはあくまで一部分に過ぎません。だからこそ、自分の目で見て、肌で感じて、“真のリアル”を判断していただきたいと思っています。

世間の噂に流されず、本質を見抜く力を養っていけば、必ず納得のいくキャリア選択につながります。表面的な情報だけでなく、企業文化やそこで働く人の思いに触れることこそが、皆さんの未来をつくる大きなヒントになるはずです。

取材担当者(高橋)の感想

「情報が溢れる時代に真実を見極める力」という副社長様の言葉は、私たち学生団体の活動理念と重なり、深く共感しました。ネガティブな情報に惑わされず、自らの五感で本質を捉えることの重要性を改めて認識し、今後の行動に活かしていきたいです。

取材担当者(高橋)の感想

【宿泊体験を超える「初音荘サステナブルスマイルアクション」】

旅館初音荘の経営において、集客とは異なる次元で大切にされているのが「初音荘サステナブルスマイルアクション」という社会貢献活動です。これは私自身の強い信念から生まれたものです。

具体的な活動として、障害を持つお子様たちが気兼ねなく旅館に泊まれる様にする取り組みや、児童養護施設の子供たちを貸し切りで宿泊させる企画があります。また、NPO法人と連携し、1型糖尿病など病気を抱えるお子様とその家族への支援も行っています。

私の根底にあるのは、「全ての子供たちに、家庭状況や病気、障害の有無に関わらず、旅館に泊まる夢を諦めさせたくない」という強い思いです。初音荘は「お子様特化の旅館」というだけでなく、こうした活動を通じて、全ての子供たちの平等な体験機会を創出し、彼らの笑顔を育むことを重要な使命としています。この活動は、働くことの真の意義を私たちに教えてくれます。

取材担当者(高橋)の感想

母が支援学校の教師である私にとって、「全ての子供たちに平等な旅館体験を」という副社長様の言葉は、非常に深く心に響きました。集客目的ではない純粋な社会貢献の精神に、企業としての真の価値を感じ、感動しました。私も社会に対し何ができるかを常に考え続けたいです。

取材担当者(高橋)の感想