本記事でご紹介するのは、1980年に創業し、45年にわたり事業を継続してきた企業です。同社は、大山社長を中心に、従業員に対し、自身の考えを等身大で正直に伝え、風通しの良い組織作りを徹底しています。企業の継続を最も重要な目標と掲げながらも、同時に社員一人ひとりのキャリア形成とワークライフバランスの実現を積極的にサポートする環境を提供しています。
<聞き手=高橋宏輔(学生団体GOAT編集部)>
【すべてのビジョンを支える絶対的な基盤】

経営者として、きれい事を言いたい気持ちもありますが、やはり一番最初に、そして前提として来るのは会社の継続です。従業員の皆さんは、会社に入社する際、まず給料をどれくらいもらえるのかという対価を気にされます。会社が存続できなくなれば、継続して給料をもらって生活していかなければならない彼らの生活も成り立たなくなってしまうからです。
弊社は1980年に創業し、現在45年が経っています。統計的に見ると、起業した会社の99%が3年でなくなってしまうと言われています。その中で45年間続けてこられたというのは、お客様に対して何らかの価値(バリューポジション)を提供し続け、その対価として存続を許されてきたということだと私は思います。
我々は大きな大企業ではないため、従業員と一緒になって会社を維持・発展させていく必要があります。したがって、会社として最も重要な目標、そして従業員に提供し続けるべきなのは、今後も45年、50年と継続し、皆が「ちゃんと飯が食える」ような会社にしていくこと、その安定を確立していくことです。これが、あらゆるビジョンや理念の土台となる要素だと私は考えています。
取材担当者(高橋)の感想
「潰れてしまったら意味がない」という言葉の通り、企業の継続こそが従業員の生活を支える絶対的な基盤であるという考えに納得しました。3年で99%が倒産するという厳しい現実の中で、45年間もお客様に価値を提供し続けてきた実績は非常に凄まじいことだと感じています。これは、私たちが社会に対して貢献したいという思いを持って会社選びをする上で、欠かせない視点だと学びました。

【若手が持つべき「想像性」と「行動」の重要性】

経験というのは、実際にやってみなければ得られません。行動なくして経験は生まれないのですから、とにかくやるのが一番早いでしょう。私たちが若い人に期待するのは、まさにその行動であり、起業家精神(アントレプレナーシップ)は経済の基礎になります。仮に100件の新規企業が立ち上がってすべてが成功しなくても、そうした動きがなければ経済は発展しないのです。
私たちが生きてきた戦後の高度成長期(1945年頃から1985年頃までの30〜40年間)は、モノが何もない状態からスタートし、必然的に需要が発生する時代でした。この時代は需要(リマンド)が見えていたため、いかに早く、効率的に、安価に生産するかという「生産性」の時代だったと言えます。しかし、皆さんの今の時代にはすでにモノやサービスが溢れており、次に求められるのは、まだ存在しないニーズ(アンニーズ)を探し出し、それを生み出すことです。 今後30年、50年を見据えたとき、旧来の方程式は当てはまらなくなります。
全く新しい価値や需要を創出していく必要があり、それが想像性(クリエイティビティ)です。この時代に求められる創造性は、若い世代の皆さんが持つ柔軟な発想こそが最も重要になります。経験値はリスクを防ぐという意味では良い要素ですが、逆に経験値が多すぎると、新しい分野に切り込んでいく際に、リスクを回避しようとして邪魔をすることも多いというのも事実です。何も知らないからこそ、恐れずにどんどん行動に移せる側面もある。「めくら蛇に怖じず」という言葉もあるでしょう。
取材担当者(高橋)の感想
学生団体として、経験値がないことの「もどかしい感じ」がある中で、まず一歩を踏み出すことの重要性を再認識しました。特に、過去の生産性重視の考え方ではなく、新たな需要や価値を創造するクリエイティビティが求められているという点が印象的でした。私自身、新しいことに挑戦し続ける姿勢は、まさに今の若者が持つべき要素だと感じています。

【等身大で腹を割って伝えるコミュニケーション】

経営者が従業員に対して、常に経営理念を同期化させるために、言葉を柔軟に、フレンドリーに噛み砕いて発信し続けることは、非常に大変でしんどいことだと思います。しかし、私の哲学はシンプルです。私は飾りようがない、取り繕う術もない人間ですから、考えていることをそのまま伝えるしかないと考えています。
会社には、うまくいく時もあれば、うまくいかない時もあります。そうした一切合切を包み隠さず「今こんな状況です」と伝えるようにしています。様々な方法論や経営学的な知識はあるかもしれませんが、私にとって大切なのは、自分の経験や本当に感じたことを相手に伝えることです。体裁を取り繕ったところで、すぐに「化けの皮が剥がれてしまう」からです。人間同士のコミュニケーションにおいて、自分の思いが相手に響くためには、等身大の自分でいることが不可欠です。
組織を動かすのは、経営指針書を読み聞かせることではありません。組織のコンセンサスを得るためには、私自身が「私は本当にこう思うんだけど、皆さんはどうですか?」という形で問いかけるしかないのです。従業員一人ひとりがそれぞれの意見を持っている中で、こうしたキャッチボールを通じて、同じ方向を見て進んでいこうと合意形成していくことが、コミュニケーションの本質だと私は考えています。
取材担当者(高橋)の感想
大山様の「等身大」の発信と、フレンドリーさが、従業員の方々にとって非常にやりやすく、意見を聞いてくれる職場環境を築いているのだろうと感じました。座学で学ぶ理論だけでなく、経営者が自ら腹を割ってコミュニケーションを取る姿勢こそが、強い組織の土台だと学びました。

【新卒採用への期待と組織のサポート体制】

新卒の方々には、自信を持って社会に挑戦してほしいということに尽きます。変に「新卒だから」と遠慮したり、小さくなったりする必要は全くありません。我々は、新しい考え方、柔軟な考え方、そしてクリエイティビティを持った、我々とは違う視点で見れる人を非常に重要だと考えています。
むしろ、間違っても構いませんので、自分の意見をどんどん述べてほしい。例えば「こんなの違いますか?」と率直に言ってもらえることが、組織の活性化(感性感)に繋がります。先輩だから、上だからと、ただ上だけを見て染まろうとする必要はありません。若気の至りとして許される環境があるうちに、どんどん意見を言い、失敗し、そこから学んでいく。我々経験のある者(老人)は、皆さんが失敗しても大丈夫なようにカバーするためにいるのです。したがって、私たちは、能動的に動き、「これがいいんじゃないですか」と提案し、意見を言ってくれる新卒の方々を求めています。
(人事担当:大西様より)人事としては、入社していただいた方々に対して、以下の2点を重視しています。一つは、その方のキャリアパスにいかに伴走し、成長をサポートするかです。これには、キャリアコンサルティング、人事評価制度、福利厚生など、あらゆる側面からの支援が含まれます。もう一つは、ワークライフバランス(WLB)の実現です。よく仕事をしていただく方こそ、オフの生活が充実しているべきだと考えています。私たちは、従業員が働きやすく、自己実現しやすい環境作りを責務としています。嬉しい事例として、男性従業員も育児休業を取得し、結婚や出産で休業した方が100%の確率で戻ってきていただいている実績があります。安心して入社していただき、存分に活躍していただくための環境が整っています。
取材担当者(高橋)の感想
能動的に意見を求め、たとえ失敗しても老人がカバーするという大山社長の言葉と、大西様が語られたWLBの徹底、特に男性の育児休業取得の実績は、私たち若手にとって非常に魅力的です。最近の若手は、給料だけでなく、余暇を楽しみたい、人生を充実させたいという点を重要視しており、企業のこうした姿勢は採用において大きな強みになると感じています。
