株式会社ユニヴは、薬学生の就職活動支援や薬剤師の人材紹介を通じて、日本全体の医療インフラを支える企業です。薬剤師向けの転職支援サイト「ファーネットキャリア」をはじめ、調剤薬局向けの経営支援、薬剤師の独立開業支援、情報提供など、多岕にわたるサービスを展開しています。特に「人と人とのつながり」を重視し、高い専門性と信頼性を基盤に、薬剤師と薬局、そして社会をつなぐ役割を担っています。
【入社の経緯と二代目社長としての覚悟】

私は、現会長である吉田が創業したこの会社で、二代目社長を務めています。今から9年前、50歳の時に代表取締役社長に就任し、現在は就任10年目を迎えました。それまで何をしていたのかとよく聞かれますが、もともと日本製鉄グループの会社で約10年勤務していました。当時は23〜24歳の若手ながら人事担当を任されており、その際、採用を手伝ってくれていたのが現会長の吉田でした。
当時、日本製鉄グループは113,845名もの社員を抱える大手企業で、父の縁で入社したものの、30歳を過ぎた頃から「人生は一度きりだから、もう少し経営層の肌感覚を感じられるポジションで頑張りたい」という漠然とした思いが芽生えました。上司からは反対されましたが、若いころの気持ちは抑えきれず、32歳でその会社を飛び出し、現会長に直談判してユニヴへの入社を決意しました。自分の本質的な力が市場の評価に直結するような会社で、自分の力を試したいという純粋な気持ちが、この会社に飛び込んだ理由です。
入社後は約7〜8年間の下積みを経て41歳で役員となり、そこから約10年間は経営側の立場で仕事をさせていただきました。そして、50歳で社長に就任し、それが9年前のことです。振り返ると、10年刻みのようなキャリアを歩んできました。社長としての使命を果たすべく、日々精進しています。
取材担当者(高橋)の感想
武内社長のこれまでの道のりを伺い、その行動力と明確な目標意識に感銘を受けました。大手企業での安定したキャリアを捨て、自らの意思で未知の領域に飛び込む勇気は、Z世代の私たちにとっても大きな学びです。特に「人生は一度きり」という言葉からは、自分の人生をどう生きるのかという問いに対する社長なりの答えが込められていると感じました。恵まれた環境に安住せず、自らの成長を追求する姿勢は、キャリアを考える上で非常に参考になります。

【社長就任後の変革と「人と人」を繋ぐ経営哲学】

社長就任後、私が特に意識して変えたかったのは、意味のない窮屈さや風通しの悪さ、上からの圧力をなくすことです。私自身、窮屈な仕事が嫌いで、それが大きな会社を辞めた理由の一つでもあります。昔の私は、小学校から大学までスポーツに打ち込み、水を飲むことも許されないような厳しい環境で育ち、前職も上下関係が厳しい会社でしたそこで学ぶべきことはたくさんありましたが、これからの時代は「個性を殺すのではなく生かし、仕事が楽しいと思える環境をつくるべきだ」というこだわりを、役員になった41歳の頃からずっと持ち続けています。
会社では毎朝、朝礼を行っています。経営理念を全員で唱和するだけでなく、前日の出来事やリフレッシュしたエピソードなどを一人ひとりが発信する場です。私がこの朝礼で伝えているのは、会社も自分の命も、これまでの先輩や仲間、そして今いる社員が紡いできてくれたものであり、それをできるだけ長く次の世代へ紡いでいくことが私の使命であるということです。目先の売上や社員の待遇向上も大切ですが、何よりも今いるメンバーが定着し、次の世代へバトンをパスしていくことが重要だと考えています。
私たちは「必ず会う」というスタイルを30年以上前から変えていません。薬学生や薬剤師の方々と必ず対面し、求職者のいる場所へコーディネーターが足を運びます。そこで信頼関係を築き、温度感や熱量を共有することから、ご縁を創出するコーディネートが始まります。IT化やAI化が進む現代だからこそ、人がやるべきことと機械に任せるべきことを見極め、人ならではの「熱量」や「思い」を大切にしています。競合他社が効率性を求めてオンラインやメールでの対応を進める中、私たちはこの「必ず会う」というアナログな対応を続けることで、他社と自然な差別化を図り、高い収益性を維持していくことができると信じています。
取材担当者(高橋)の感想
武内社長の経営哲学からは、「人間性」と「個性を尊重する」ことへの強い信念が伝わってきました。特に「必ず会う」という徹底した方針は、デジタル化が進む現代において逆説的に大きな強みとなっていると感じます。コロナ禍を経験した私たちZ世代は、人と直接会うことの尊さを改めて実感しています。社長が言うように、当たり前のことを当たり前に、そして丁寧にやり続けることが、これからの時代における真の差別化となり、感動を生むのではないでしょうか。

【薬剤師業界の現状とユニヴの貢献】

薬剤師業界は現在、著しい売り手市場です。少子高齢化という問題は薬剤師業界にも大きく影響しており、特に高齢者の増加により医療サービスの需要が高まっています。年金問題にも見られるように、将来的に働く世代が少ない人数で高齢者を支えなければならなくなるため、医療費の抑制が求められます。これにより、病院での長期入院が難しくなり、自宅や施設で医療を受ける機会が増加しています。
こうした状況の中、薬剤師は従来の薬局カウンターでの調剤・服薬指導だけでなく、患者さんの自宅や施設へ出向いて薬を届け、服薬管理を行う「在宅支援業務」の重要性が増しています。国も、このような在宅支援を評価する診療報酬の加算要件を緩和しており、薬剤師の活動領域は広がる一方です。毎年9,000〜10,000名の薬学生が国家試験に合格して世に出ますが、それでもなお薬剤師の数は足りていません。有効求人倍率は5倍を優に超える状況です。
当社は約30年前から薬剤師の人材紹介をスタートしており、現在もこの売り手市場を背景に、薬剤師の採用支援や転職支援、薬学生の就職活動支援を行っています。特に力を入れているのは、薬剤師や薬学生に認知されているインフルエンサーの方々と連携し、TikTok、InstagramといったSNSを活用して、就職や転職に困っている方々を当社に紹介していただくことです。また、長年の実績から口コミや友人紹介、ライフステージの変化によるリピート利用も多く、これらが当社の売上の2〜3割を占めています。
取材担当者(高橋)の感想
薬剤師業界が抱える課題と、ユニヴ様がその課題解決にどのように貢献しているかを知り、非常に興味深く感じました。特に、社会の高齢化に伴い薬剤師の役割が拡大しているという話は、医療業界で働くことの意義を深く考えさせられます。インフルエンサーを活用した採用戦略は、現代の若者に対するアプローチとして非常に効果的であり、口コミやリピートが売上に大きく貢献しているという事実は、ユニヴ様が築き上げてきた信頼関係の証だと感じました。

【未来を見据えた次世代育成と「人が嫌がることをやる」挑戦】

当社は現在30名強の少数精鋭の会社であり、「1.5〜2刀流」のように、一人ひとりが複数の役割を担い、高いモチベーションを持って仕事に取り組むことを意識しています。中途採用は継続的に行っていますが、早期の戦力化を考えると、社会経験のある中途人材をOJTで育成するモデルが今のところは比較的強い傾向にあります。しかし、新卒採用の成功事例も生まれており、近い将来には新卒採用にも再び力を入れる時期が来るでしょう。
社長に就任した50歳の頃から、次世代へのバトンパスを意識し、この3〜4年でその意識をさらに強めています。まるで400メートルリレーのバトンパスのように、渡す側と受ける側がトレーニングを積み、時間をかけて互いの価値観を共有すること。これは会社が100年企業となるために、今いるメンバーが定着し、次の世代へしっかりと受け継がれていくための重要なプロセスです。
これから社会に出る皆さんに伝えたいのは、「人がやらないことをやっていったほうが良い」ということです。一番簡単で、一番目立つのは「人が嫌がること」を受け入れることです。それを受け入れて相手に還元すると、相手の喜びは倍増し、そこに感動が生まれます。すると相手はその人を忘れなくなり、信頼関係が深く築かれます。人間性や個性を尊重し、相手の「熱量」や「思い」にしっかりと耳を傾け、共感しながら関わること。そうした人と人との心のつながり”を大切にする姿勢こそが、今もこれからもユニヴの強みであり、成長の鍵であると確信しています。
取材担当者(高橋)の感想
武内社長の次世代への思いと、社員一人ひとりの成長を願う姿勢に心を打たれました。特に「人が嫌がることでも、率先して行動する」というアドバイスは、まさに私たちがこれから社会で生き抜く上で必要な視点だと感じました。効率化が追求される現代だからこそ、人間だからこそできる「泥臭さ」や「人とのつながり」を大切にすることの価値を改めて認識しました。ユニヴ様が目指す「世代を超えたバトンパス」は、単なる事業継承にとどまらず、人と社会への深い貢献を意味していると感じ、私自身もその一端を担えるよう努力したいと強く思いました。
