ファインフォレスト株式会社は、神戸市垂水区を拠点に、介護付有料老人ホーム「フォレスト垂水 壱番館」と住宅型有料老人ホーム「フォレスト垂水 弐番館」を運営しています。また、訪問介護や訪問看護、居宅介護支援などの在宅介護サービスも、子会社を通じて提供しており、グループ全体で地域に密着した幅広い介護事業を展開しています。
入居者様やそのご家族だけでなく、地域の方々、そしてスタッフすべてが笑顔で楽しく過ごせる場所を提供することを使命とし、「Always Smile(いつも笑顔で)」を合言葉に、質の高い介護サービスを提供しています。地域に根差し、お困りごとに寄り添いながら、安心した生活をサポートすることを目指している企業です。そこで、地域密着で広げてきた多角的サービスの背景と「Always Smile」に込めた信念、そしてこれから描く介護の未来について、代表取締役社長・田邊様にじっくりと伺った。
<聞き手=石嵜渉(学生団体GOAT編集部)>
【今までの経緯・背景】

ファインフォレスト株式会社の創業は、今から25〜26年前にさかのぼります。当時は、まだ有料老人ホームがそれほど多くない時代でした。創業のきっかけは、私の母の知人のご主人が突然介護を必要とされ、さまざまな施設を転々とされる大変なご様子を間近で見たことでした。その経験から「自分に何かできることはないか」と考え、さらに社会福祉に深く携わりたいという母の長年の思いも後押しとなり、介護施設の開設を決意しました。
開設地の選定にあたっては、入居者様とそのご家族が面会に訪れやすい環境であることを重視しました。現在の所在地である神戸市垂水区旭が丘は、駅から徒歩6分という利便性に加え、山陽電車とJRの両方が利用でき、高速道路のインターチェンジからも車で5分ほどとアクセスが良好です。また、明石海峡を一望できる見晴らしの良さも大きな魅力で、車いすの方でも開放的な景色を楽しんでいただける点も、この地を選んだ理由の一つです。
近年、特に厳しかった時期として、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが挙げられます。感染症対策に細心の注意を払い、スタッフ一同、感染拡大を防ぐため、業務中だけでなくプライベートでも外食を控えるなど、厳しい行動制限を経験しました。しかし、この困難な時期を乗り越えた現在では、日々のレクリエーションや月に一度のロビーコンサートも再開し、以前にも増してイベントの機会が広がるなど、活気ある日常が戻ってきたと感じています。
取材担当者(石嵜)の感想
創業の背景には、目の前の困っている人に寄り添いたいという強い思いがあることに感銘を受けました。交通の便や眺望といった具体的な立地条件の良さが、入居者様とそのご家族の「会いに来やすさ」に繋がるという細やかな配慮も素晴らしいと感じます。また、コロナ禍という前例のない困難な状況に直面しても、感染対策に尽力し、現在は積極的に活動を再開されている点から、どんな状況でも諦めずに最善を尽くすという企業の粘り強さと、入居者様へのサービス向上を追求する姿勢が伝わってきました。就職活動をする上で、困難にどう向き合い、乗り越えていくのかという視点は非常に重要だと改めて感じました。

【事業・業界について】

ファインフォレスト株式会社は、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホーム、訪問介護やデイサービスなどの在宅介護サービスを、グループ全体で幅広く展開しています。近年は、社内に「地域サービス事業部」を立ち上げ、地域住民の方々が参加できるセミナーの企画など、地域との連携をさらに強化する取り組みを進めています。これにより、介護や看護の専門知識を生かして、地域にお住まいの方々の生活上のお困りごとに寄り添い、安心して暮らせる環境づくりのお手伝いを積極的に行っています。
当社が企業として最も大切にしていることの一つは、「入居者様、ご家族、関係者、そしてフォレストで働くスタッフ全員が笑顔で楽しく過ごせる場所」であることです。その思いを表す合言葉が「Always Smile(いつも笑顔で)」です。朝礼では心からの笑顔を確認し合い、笑顔には人を元気にする力があると信じ、私たちは入居者様を元気にすることを使命としています。介護はサービス業であるという認識のもと、この「笑顔」を日々の仕事の中で大切にし、常に忘れないよう努めています。
この合言葉を支えているのが、「スタッフファースト」の考え方です。介護という仕事には大変な面も多いため、創業当初からスタッフが安心して働ける環境づくりに力を注いできました。具体的には、年に一度の10日間の長期休暇制度や、会社補助付きの温かい昼食の提供など、福利厚生を充実させています。また、女性スタッフが多く子育て世代も多いことから、託児所の併設、半日有給制度の導入、従来は小学校就学前までとしていた夜勤免除制度を小学校6年生までに延長するなど、スタッフの声に耳を傾け、協力体制のもとで、より働きやすい制度へと常に改善を重ねています。さらに、資格取得費用や更新費用の補助に加え、月2回程度の社内研修を実施し、スタッフのスキルアップと成長を支援しています。
介護業界全体が人手不足に直面している現状については、憂慮しています。特に、介護職を目指す若い世代が少ない一方で、高齢化社会の進展に伴い介護ニーズは増え続けています。こうした課題を踏まえ、介護職だけでなく看護職やリハビリ職など幅広い職種で採用を行い、若い世代に介護の仕事を知るきっかけを提供したいと考えています。さらに、ICT(情報通信技術)の導入など、人の力だけでなく機械の力も活用し、多様な形で介護に関わる方法を模索しています。
取材担当者(石嵜)の感想
「Always Smile」という合言葉は、介護という仕事の本質的な価値を象徴していると感じました。利用者様はもちろんのこと、スタッフも笑顔で働ける環境を重視する「スタッフファースト」の姿勢には深く感銘を受けます。特に、10日間の長期休暇制度や、小学校6年生まで夜勤を免除する制度など、スタッフ一人ひとりのライフステージに寄り添った制度は、働く人への深い配慮が感じられ、このような企業であれば長く安心して働き続けられるだろうと強く感じました。介護業界が抱える人手不足という大きな課題に対して、ICT導入など多角的な視点から解決策を模索する柔軟な発想は、これからの社会で活躍したい学生にとって大いに学びとなるでしょう。

【今後の展望】

ファインフォレスト株式会社は、今後さらに地域社会との連携強化を目指しています。近年立ち上げた「地域サービス事業部」では、地域住民が気軽に参加できるセミナーの企画・開催を積極的に進めていく予定です。その具体的な取り組みの一つとして、神戸大学が考案した認知症予防体操「コグニケア」(数字を数えながらじゃんけんをするなど、運動と頭を使う二重課題運動)を導入し、地域の方々やホームの入居者様が参加できる機会を設けました。
また、以前はコロナ禍の影響で閉鎖せざるを得なかった地域との交流の場を、順次再開しています。地域住民の方々がホームを訪れ、交流できるような新たな機会やきっかけを創出することで、地域全体で高齢者を支え、活性化していきたいと考えています。これは、介護や福祉の専門知識を地域に還元し、住み慣れた地域で誰もが安心して暮らせる社会の実現に貢献したいという私たちの願いです。
私たちは毎年の目標を、事業年度開始日となる10月1日に開催するキックオフイベントでスタッフ全員に共有しています。昨年のテーマは「おもんぱかる(慮る)力を育てよう」でした。私自身、「おもんぱかる」という言葉がとても好きで、相手を思いやる心を意味します。この力を育むことで、自分だけでなく、皆がお互いに優しい気持ちで支え合える関係を築きたいという思いが込められています。売上などの数字だけでなく、心の豊かさを大切にする目標を掲げ、日々の活動に取り組んでいます。
取材担当者(石嵜)の感想
神戸大学と連携した「コグニケア」の導入や、地域住民との交流再開の検討など、地域に開かれたホームとして社会貢献を目指す姿勢に感銘を受けました。特に「おもんぱかる力を育てよう」という目標は、企業文化の根幹にある温かさを象徴していると感じます。このような、数字だけでなく人の心を大切にする経営は、働く上でのやりがいや人間関係の質にも直結すると考えられ、就職先を選ぶ上で非常に魅力的なポイントだと感じました。

【学生へのメッセージ】

「私には、皆さんと同じ年頃の娘がいますので、娘に話すような気持ちでお伝えしたいと思います。まず皆さんに取り組んでほしいのは『自己分析』です。自分が何をしたいのか、何が得意で何が苦手なのか、自分自身を深く理解することが非常に大切です。そのための一つの方法として、アルバイト経験は大きな意味があります。社会の一員としてさまざまな経験を積むことで、自己理解を深めることができると考えています。
次に、社会に出る前に『マナー』を身につけることの重要性についてお伝えしたいと思います。大人になると、誰もが親切にマナーを教えてもらえる機会は少なくなります。そのため、学生のうちに失敗を恐れず、多くの人からさまざまなことを学び、積極的に質問することが大切です。この時期にしか得られない貴重な学びの機会を、ぜひ最大限に活かしてほしいと思います。
さらに、私は『さまざまな世代とのコミュニケーション』を積極的にとることも勧めます。核家族化が進む現代では、祖父母世代との交流が少ない学生も多く、アルバイトなどを通じて年長者と接する経験は、異なる世代の価値観や考え方を学ぶ上で非常に有益です。
もう一つ強調したいのは『旅行』の重要性です。時間に余裕のある学生のうちに、自分で飛行機や宿泊先を手配し、国内外を問わずさまざまな場所を訪れることで、現地での楽しい経験や時には困難な経験を通じて自己成長につなげることができます。社会に出ると長期の旅行に行きにくくなるため、学生のうちに行きたい場所へ、国内外を問わず、留学も含めて多くの経験を積んでほしいと強く感じています。」
取材担当者(石嵜)の感想
自己分析、アルバイト、旅行という3つのアドバイスは、就職活動を控える学生にとって非常に実践的で、かつ本質的なメッセージだと感じました。特に、アルバイトを通して多様な世代と交流し、マナーを学ぶことの重要性や、旅行で「時間のある学生時代にしかできない経験」を積むことの価値は、私自身も強く共感しました。これは、単に就職に有利になるというだけでなく、人間としての幅を広げ、豊かな人生を送るための土台作りになるのではないでしょうか。
