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創業55年、ユニオンコーヒーロースターズ社長が語る、裏方として市場を牽引する力

2025年10月09日

株式会社ユニオンコーヒーロースターズ

創業55年、ユニオンコーヒーロースターズ社長が語る、裏方として市場を牽引する力

株式会社ユニオンコーヒーロースターズは1970年に設立され、約半世紀にわたり珈琲焙煎ひとすじに技術を磨いてきた企業です。収穫されたままの珈琲生豆に熱をかけ、香りと深い味わいを育む焙煎を核とし、品質管理、粉砕、パッキングまでを一貫して行う技術と体制を備えています。職人の熱意と緻密に計算されたレシピを追求する姿勢が、ユニオンコーヒーロースターズのスピリットを支え続けています。私たちが焙煎したコーヒーが、仕事の合間や朝食、あるいは一人の時間など、なにげない日々の暮らしのそばにいつもいて、小さな幸せをお届けすることを、企業としての大きな喜びにしたいと考えています。今回は、長年にわたり「香り」と「味わい」を追求し続けるユニオンコーヒーロースターズのものづくりの精神、そして次世代へと受け継がれる焙煎への想いについて、代表取締役社長にじっくりとお話をお伺いしました。

<聞き手=石嵜渉(学生団体GOAT編集部)>


【橋本様の今までの経緯・背景】

私は、大学を卒業した後、前職では営業として仕事をしていました。当時の私は、社長になるための特別なレールもなければ、そうなるための勉強もしていませんでした。子供が幼く、幼稚園の費用なども含めて、生活を支えていかなければならないという責任がありました。私は経営者としての帝王学や経営学を何も学んでいませんでしたが、生活のために様々な職業を経て、当時の求人誌を見て、たまたまユニオンコーヒーの採用面接を受けました。何の縁もゆかりもなく入った会社でしたが、それが転機となりました。

入社後、私は営業として働きました。会社が様々な問題に直面する中で、営業出身の私が抜擢される形で社長に就任しました。現在、社長になってから15年になります。私は常に自分の仕事に対して、自分で責任を持つことを基準としてきました。自分のスタイルを貫いてきたため、上司の言うことも聞かず、自分の好きな形で仕事を進めていました。自分の仕事は自分で責任を持つという意識があったため、様々なことを気にせずに、自分のスタイルを貫くことができたのだと考えています。たまたま入社した会社で社長を務めることになり、今も続けているのが現状です。この経緯は、業界の流れの中で私自身が社長に就任したエピソードとして捉えています。

取材担当者(石嵜)の感想

何の縁もなく入った会社で、営業職から社長に抜擢され、15年間も会社を牽引されている経緯に、大変な波乱万丈さと実力主義的な環境を感じました。ご自身の苦労を乗り越えてきた自律性、そして覚悟が滲んでいるように感じます。この会社が今も続いているのは、社長のスタイルと実行力が核にあるからだと推察します。

取材担当者(石嵜)の感想

【株式会社ユニオンコーヒーロースターズ事業・業界について】

私どもの事業の最大の特殊性は、100%委託加工というビジネスモデルを採用している点にあります。一般的なメーカーや卸売業者と異なり、自社ブランドは持たず、裏方として事業を支えています。具体的には、大手飲料メーカー、レストラン、喫茶店の有名チェーン店など、多くのお客様のコーヒー豆を、焙煎から粉砕、パッキングまで一貫して請け負っています。スーパーなどで販売されているコーヒーに他社の名前が書いてあっても、実は私どもが製造しているということもあります。

ユニオンコーヒーは、各社が集まり共同の焙煎工場を作ろうという目的で設立された経緯があり、当社は日本でトップレベルの生産量を誇ります。大きな設備を置いて大量の加工を行う装置産業としての役割が大きく、これが当社の強みです。大きな設備投資が必要とされるため、この特殊な形態で事業を続けてきたことが、創業から55年もの実績を支えています。

コーヒーは、食品の分類に入りますが、お米や野菜のように生きる上で不可欠なものではないにもかかわらず、需要が伸び続けているという特異な性質を持っています。これはコーヒーが嗜好品であり、中毒性もあるためだと考えられます。私どもは、お客様からの要望に応え続けることで、この成長市場において必要とされ続けている会社であると認識しています。

また、当社では、品質管理や品質保証の分野で新しい人材を求めています。現場はブルーカラー(製造)が主であり、高卒(工業高校)の採用も行っていますが、品質管理には、いわゆるカッピング(テイスティング)などの専門的なスキルが必要とされます。そのため、今後は、学生の方々にもインターンシップなどを通じて参加してもらい、専門的な知識を持つ人材を育成したいと考えています。将来的には、世界的な資格(例:コーヒー鑑定士)を取得できるよう、社員を海外へ派遣することも視野に入れています。

取材担当者(石嵜)の感想

日本を代表する大手メーカーや有名チェーン店の製造を支えているという事実に驚きました。大手メーカーさんとの取引があるという事実は、就職活動中の学生からすると、経験やスキルを積む上で非常に魅力的な環境だと感じました。品質管理のインターンシップでカッピングなどに携われるのは、専門知識を深めたい学生にとって絶好の機会だと感じます。

取材担当者(石嵜)の感想

【株式会社ユニオンコーヒーロースターズ今後の展望】

私が経営において最も重視している価値観は、スピード感です。仕事においては、完璧でなくても良いから、まずは急いで行動し、報告することが非常に大事です。社員には「仕上げなくても良いから、時間を守って報告に来い」と常々伝えています。情報が古くなってしまうと、対応が遅れ、ビジネスチャンスを失ってしまうからです。情報を見つけ、その情報に基づいて素早く動くことが、事業を成功させるための鍵だと考えています。

このスピード感を持って動くことの重要性は、具体的な事業展開にも表れています。昨年、私たちはベトナムに100%外資の現地法人を、わずか2ヶ月で設立しました。これは、コーヒーの収穫が年に一度、10月から始まるため、それに間に合わせる必要があったからです。収穫に遅れれば、商売が1年遅れてしまうことになります。この事業は、ベトナム現地の農民の年収を増やすことも目的の一つとしています。社会主義国特有の銀行や法的な問題が多くある中でも、私たちは「とりあえず叩き台を作って速攻で行こう」という姿勢で、計算されたリスク管理のもと、事業を進めています。

また、企業としての持続可能性(SDGs)と環境への貢献も、重要な将来の目標です。私たちは、この3年間の中期計画において、カーボンニュートラルな会社にすることを目指しています。焙煎時にはCO2の排出が伴いますが、電気使用についてはLED化を進め、さらに再生可能エネルギーを購入することで排出量を相殺(プラスマイナスゼロ)にすることを目指します。ガスについても再生熱ガスへの切り替えを進めることで対応しています。排出を垂れ流しの状態にするのではなく、環境に配慮し、地域や社会に貢献していくことが、企業が将来必要とされ続けるために不可欠だと考えています。

取材担当者(石嵜)の感想

経営の核として「スピード感」を掲げ、実際にベトナムでの事業立ち上げを2ヶ月で完遂されたという実行力は驚異的です。収穫期という明確なデッドラインに向けて、社会主義国での複雑な問題をクリアしながら事業を推進する手腕は、学ぶべき点が多いと感じました。さらに、SDGsやカーボンニュートラルといった、社会貢献性の高い目標を掲げ、会社の根幹から変革しようとしている姿勢は、今の社会課題に関心を持つ学生にとって非常に魅力的だと感じます。

取材担当者(石嵜)の感想

【橋本様の学生へのメッセージ】

社会に出ていく学生の皆さんに、私が学生時代に最も意識してほしいと願っているのは、何にでも興味を持つことです。学生はまだ分からないことが多いと思いますが、人生においては、興味を持つか持たないかで、大きな差が生まれてきます。関心のないものは見ていても見えませんが、関心を持てば、全ての情報が見えてくるものです。

常に「なぜ?」「どうして?」と問いかけ続ける習慣こそが、様々な情報を得るための第一歩です。情報が増えれば、次の行動につながり、それがスピード感を持って実行されることで、多くのことが可能になります。学生時代は最も身軽な時期ですから、あらゆることにまず関心を持つ姿勢を大切にしてください。

また、学生のうちに取れる資格は、取るべきだと考えます。社会人になってから「後で取ろう」と思っても、仕事で時間的な余裕がなくなり、なかなか取ることができなくなります。何か資格が必要だと感じたら、すぐに行動に移し、挑戦してください。挑戦してみて、自分に合っていると思ったら粘って取得すれば良いし、不要だと判断したら捨てれば良いのです。

社会人として働く上では、スピード感が不可欠です。情報が溢れる現代社会では、スピード感を持たずに仕事をしていると、情報戦において周りに負けていってしまいます。自分だけ良ければ良いという考えではなく、社会に貢献していくことが大切です。

取材担当者(石嵜)感想

学生へのアドバイスとして、抽象的な「興味を持つこと」を、具体的な「常に『なぜ』と問い続ける」ことの重要性として語っている点が、非常に実践的だと感じました。また、資格取得や行動のスピード感の重要性についても、現役学生として改めて学ぶべきだと感じます。社会人になって時間がなくなる前に、行動的な経験と静的な知識習得を両立させることが大切だと改めて理解しました。

取材担当者(石嵜)感想