サンフェステは1994年に京都・亀岡の地で創業し、今年で31年目を迎える地域密着型の企業です。当時、この亀岡には存在しなかった酒のディスカウントショップとしてスタートし、地域住民の生活に貢献したいという強い思いから事業を開始しました。現在では、酒販事業、業務スーパーのフランチャイズ運営、そして独自のイタリアンレストラン経営を含めた飲食事業部のフランチャイズ展開という「三本柱」を軸に、多角的な事業展開を行っています。
創業以来、私たちは「人と人との顔合わせ」「対面での接客」を通じて人とのつながりを大切にするという創業者の精神を受け継いでいます。機械化が進む現代においても、この「人間力」を核とした経営を貫き、「人を削るわけにはいかない」という考えを持っています。人手不足が叫ばれる小売・食品業界において、人を大切にする独自の採用・育成戦略で、社員一人ひとりの成長と豊かな生活を追求し、持続可能な企業成長を目指しています。
<聞き手=高橋宏輔(学生団体GOAT編集部)>
【創業の精神:地域と人への貢】

私たちがサンフェステを立ち上げたのは1994年、酒のディスカウントショップとしてでした。当時、地元亀岡にはお酒のディスカウントショップが一つもなく、どこの酒屋さんもほぼ定価販売でした。京都市内や大阪、滋賀の中心地には大手ディスカウントショップが展開されていたのを見て、亀岡の住民の方々に少しでも貢献したいという強い思いから、お酒のディスカウントショップとしてスタートしたのです。
創業時は、私が最初の店舗の店長を務め、初代社長と共にたった2人で会社をスタートさせました。私を含めて正社員が5人、アルバイトが10人未満という規模からの出発でしたが、当時から1店舗に収まるつもりはなく、亀岡で2号店、3号店と増やしていきたいと常に話していました。多店舗展開を目指すビジョンを初代社長と共有していました。
創業からずっと、「人と人との顔合わせ」を大切にし、対面での接客を通じて人の繋がりをしっかり導き出し、最大限につなげようという思いで事業を行ってきました。これは今もサンフェステの根幹をなしています。 私は昨年2024年7月に代表に就任し、三代目となります。創業から30年以上、今年で31年目を迎えますが、地域への貢献と人とのつながりを最優先するサンフェスの企業文化は、時代が変わっても揺るがない私たちの強みであると実感しています。
取材担当者(高橋)の感想
創業当初から地域への貢献と人とのつながりを重視する姿勢は、現代の若者が企業選びで重視する「社会貢献」や「人間関係」といった価値観と深く結びついていると感じました。たった2人からのスタートでありながら、多店舗展開を見据えていたというビジョンの大きさは、若者にとって挑戦する環境として魅力的に映るのではないでしょうか。目の前の利益だけでなく、地域や人との関係性を大切にする創業の精神が、サンフェスの持続的な成長の源だと感じました。

【変化する時代への対応と人材戦略】

ここ数年、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。例えば、店舗を出店する際の建築費用は1.5倍ほどに高騰しています。また、人件費も私が若い頃は時給600円の時代でしたが、現在は1155円であり、今秋にはさらなる上昇が見込まれています。
さらに法改正も進み、パートタイマーの方々にも有給休暇の取得が義務化されています。年間で社員と同様に必ず取得しなければならないとなり、今まで給与として発生しなかった手当が増加しています。このような状況でも、私たちは創業からの「対面での接客」という精神を守り続けています。スーパーや飲食業はITやロボットで完全に代替できるものではなく、「人を削るわけにはいかない」と考えています。そのため、私が昨年7月に代表に就任して最初に取り組んだことは、まず「人員の雇用」でした。
社員の待遇改善と働きがい向上のため、店長以上の従業員には年俸制を導入しています。また、1分単位のタイムカードシステムは亀岡で最も早く導入したと自負しており、これにより残業時間の削減と有給休暇の確実な消化を推進しています。総務においてもチェック機能を設け、従業員の休暇管理を行っています。さらに、就職活動を行う学生の皆さんの声を受け、2026年3月卒業の新卒採用からは、固定残業代を撤廃しました。これらの取り組みは、変化の激しい時代においても、従業員が安心して長く働ける環境を整えるための重要な一歩であると信じています。
取材担当者(高橋)の感想
物価や人件費の高騰、法改正といった厳しい経済環境の中でも、「人を大切にする」という創業の思いを貫く姿勢に感銘を受けました。特に、固定残業代を廃止し、実際の勤務時間に応じた手当を支給するという決断は、若者が重視する「透明性」や「公正な評価」に繋がるものであり、働く側にとって非常に安心感を与えるものだと感じました。

【現場主義と多様なキャリアパス】

私たちは、創業当初から共に働いてくれる学生アルバイトさんを正社員に登用するケースが多くあります。彼らは会社のことも仕事内容もよく理解しているため、即戦力として活躍しています。私自身は創業からの社員であり弊社での経験はありませんが、現在5名いる取締役のうち4名はアルバイトからキャリアをスタートさせ、取締役まで昇進しています。
彼らは長年、苦楽を共にし、お互いの性格や現場の大変さを熟知しています。特に現場は常に動いており、管理部門にいるだけではその気持ちは共有できません。取締役全員が現場経験者であることは、当社の強みの一つであると自負しています。私たちは現場こそが全てだと考えています。
新卒採用にも力を入れていますが、年間5名程度の採用に留まっているのが現状です。私たちは、新卒の皆さんが入社後、社会人として成長し、長く現場で活躍して将来的には上位ポストを目指してほしいと期待しています。入社後1ヶ月から2ヶ月間は、オリエンテーションとして酒販、業務スーパー、飲食、青果、製造など様々な現場を巡る研修を実施し、自身の可能性を探る機会を提供しています。どこに新たな可能性が広がるかわからないため、この期間を非常に重視しています。また、社会人としての挨拶など、基本的なマナー教育にも力を入れています。これは、将来的に皆さんが困難に直面した際に役立つ重要な教育であると考えているためです。
取材担当者(高橋)の感想
アルバイトから取締役への昇進というキャリアパスは、若者にとって大きなモチベーションとなるでしょう。現場を重視し、社員一人ひとりの成長を支援する文化は、自らの可能性を広げたいと考える学生にとって魅力的な環境だと感じました。特に、新卒研修で複数の事業を経験できることは、自分の適性を見つける上で非常に貴重な機会となるはずです。

【事業の多角化と未来への挑戦】

私たちの最終目標は、仕事を通じて社員が成長し、豊かな生活を送ることです。現在、酒販、業務スーパー、飲食事業部という3つの柱で事業を展開していますが、この全てが常に順調に伸びるとは限りません。例えば、コロナ禍では飲食事業が厳しい状況に直面し、酒販事業の配達も半減しました。このような経験から、私たちは経営の安定性の重要性を改めて認識しました。
しかし、当社の強みは、一つの事業が悪化しても他の事業でカバーできる多角化経営にあります。現在の150名以上の正社員の生活を守るため、状況に応じて部署間の協力を得ることで、従業員が末永く安心して働ける職場を提供しています。各部署に特化しない多様な事業展開こそが、当社の持続可能な成長を支える秘訣であると確信しています。
私たちは、将来的に一般市場への再上場を目指しています。過去には東京プロマーケットに上場していましたが、株価が変動しない特殊な市場であり、年間数千万円の維持費が発生するため、2025年6月26日の株主総会をもって上場を取り消しました。この費用を内部留保して、従業員様への特別配当などに充てる方が 、皆が喜ぶ結果につながると判断したためです。一般市場への再上場は、企業としての信頼を高め、従業員がより誇りを持って働ける環境を整えるための一歩と考えています。
取材担当者(高橋)の感想
多角化経営により従業員の雇用と生活を守るという考え方は、企業の社会的な責任を強く意識していると感じました。また、東京プロマーケットへの上場とその後の取り消しという決断は、目先の利益や体裁だけでなく、長期的な視点で従業員の幸福と企業の真の成長を追求する経営者の覚悟が表れていると思います。一般市場への再上場を目指すという目標は、社員にとっても大きな夢となるでしょう。
