瀬戸内運輸株式会社は、愛媛県今治市を拠点に路線バス・観光バス事業を展開する地域密着型の交通会社です。グループ会社には旅行会社や自動車整備会社も含まれ、地域の移動と観光を支えています。今回は、一般入社から叩き上げで社長に就任した渡邉社長に、キャリアの歩みや仕事観について伺いました。

人生の分かれ道となった「父の友人の一言」
私は同族経営ではなく、一般の大学生として入社し、叩き上げで現在の地位に至りました。幼少期から車と旅行が好きで、学生時代を通じて旅行研究に没頭していました。
大学4年の7月、最も遅い時期に就職活動を始め、大手旅行代理店の最終面接まで進みました。しかし「海外添乗ができますか」という質問に言葉が詰まり、内定は得られませんでした。会社はバイタリティがあり、恐れない学生を求めていたのです。
その後、東京のホテル会社から内定をいただきましたが、お盆に帰省した際、父の友人から「うちの会社を受けてみないか」と声をかけていただきました。昭和63年の夏の父の友人の一言がなかったら、私は今ここにいなかったと思っています。バス会社は観光事業もあり、旅行業と離れたものではありませんでした。何より、せっかくお声をかけていただいた方の顔を潰してはいけないという思いで入社を決めました。
取材担当者(石嵜渉)の感想
人生の大きな岐路で「恩義」を優先し、地元就職を決断されたエピソードは印象的です。就活では予想外の出会いが人生を変えることがあります。周囲の人との縁を大切にする姿勢は、就活生にとって重要な学びになるでしょう。


営業から社長へ|36年間のキャリアの軌跡
入社後10年間は観光貸し切りバスの営業を担当し、人と話すことが本当に楽しい日々でした。松山市内の旅行業者様を回った後、広島・大阪の関西地区の営業を8年半担当しました。
その後、今治市に戻り、現場の営業所でバスの運行管理を3年間、営業所長を3年間務めました。本社では総務人事、社長秘書を12年間担当し、取締役、常務取締役を経て、4年前に社長に就任しました。
平社員であっても社長であっても、目指すことは一緒だと考えています。お客様にいかに満足していただけるか、安全にお客様を目的地までお届けするか。これが経営の基本です。
取材担当者(石嵜渉)の感想
営業、現場管理、本社勤務と幅広い経験を積まれてきた渡邉社長。どの立場でも「お客様満足」という軸がぶれていません。就活生の皆さんも、役職に関わらず仕事の本質を見失わない姿勢を持ってほしいと思います。


誠意を貫いた営業所長時代の原体験
営業所長時代に経験したことは、一生忘れることができません。人身事故が起こったらその責任は営業所長にあります。夜中でも事故の現場や病院へ駆けつけ謝罪をいたしました。
特に印象に残っているのは、死亡事故が起きた時のことです。病院で土下座をして謝罪しましたが、なかなか許していただけませんでした。お葬式でも「会社の人間は帰ってくれ」と罵声を浴びせられました。それでも毎週お線香を上げさせていただいた結果、1周忌が終わった後に示談に応じていただきました。これは誠意が伝わった結果だと考えています。
被害者の方がお勤めされていた会社が、弊社と取引している整備会社でした。その社長様から「そこまでしてくれる営業所長はいない」と言っていただいたことが示談に結びつきました。どこで繋がっているかわからないということを実感し、常日頃から人との繋がりを心に刻んで会社を経営しています。
取材担当者(石嵜渉)の感想
困難な状況でも誠意を貫き続けた経験は、信頼関係の築き方を教えてくれます。世間は狭く、どこで縁が繋がっているかわかりません。日頃の行動が将来の自分を助けることを、就活生の皆さんも覚えておいてください。


学生へのメッセージ|アルバイト経験がスタートラインを分ける
アルバイトをされている学生さんと、勉強に専念していた学生さんとでは、入社してからのスタートラインが違います。同期入社でも明らかに差が出ていたと人事担当から報告を受けました。
私も4年間アルバイトをしました。最初は接客業、その後はマスコミ系の報道部で働きました。「すぐに動かないと仕事にならない」という経験が、営業所長時代の事故対応にも生きてきました。
社会に出るにあたって持っておいた方がいいのは、やはり礼儀です。何かしていただいても「ありがとうございます」と一言言うこと。その一言が、お客様や周囲の人々から助けられることに繋がるのです。
取材担当者(石嵜渉)の感想
学生時代のアルバイト経験が社会人としての土台になるという言葉は説得力があります。接客や現場での緊張感ある経験は、将来必ず活きてきます。学業とのバランスを取りながら、積極的に経験を積んでください。


今後の展望|安全第一で地域を支え続ける
コロナの4年間で、グループの旅行会社は大きな損失を負いました。目標の一つは、せとうち観光社を黒字転換させ、健全な会社にしていくことです。
現在、ドライバー不足には本当に苦労しています。今年度からは総合職で入社した方をドライバーへ養成していく形態にシフトしています。AI導入や自動運転バスも検討していますが、安全性を考えると、弊社ではもう少し先になるだろうと考えています。
「事故を未然に防ぐのは私たちの使命です」ということを日頃から社員には伝えています。それが、お客様の信頼を獲得する基本だと考えています。
取材担当者(石嵜渉)の感想
最新技術の導入より安全性を優先する姿勢は、交通事業者としての責任感を示しています。派手な施策より基本を愚直に実行する経営は、どの業界でも通じる考え方です。就活生の皆さんも、仕事の本質を見極める目を養ってください。
