株式会社とみづやは、食品業界に属する企業である。元々は、おじい様の代から続く酒屋として創業したが、現在は業務スーパーの運営を事業の核として展開している。「人と人との繋がりを大切に新しいことに挑んでいく」という理念を掲げ、事業の柱である業務スーパーの運営に加え、自社直営の精肉部門「にくにく広場」、自社直営鮮魚部門「魚日和」をオープン。また、初の大型外食部門となる「神戸クック・ワールドビュッフェ」の運営にも進出するなど、常に新しい挑戦を続けている。大阪を拠点とするラグビーチーム「レッドハリケーンズ大阪」や同じく大阪を拠点とするB.LEAGUE所属のプロバスケットボールチーム「大阪エヴェッサ」のオフィシャルパートナーを務めるなど、地域社会への貢献活動も積極的に行っている企業である。

創業と事業転換:酒屋から業務スーパーへ
私の会社経営の始まりは、祖父の代から続く酒屋の承継でした。私が28歳か29歳の頃、父が早くに亡くなりました。昔の酒屋も今はほとんど残っていませんが、当時は家業を継ぐのが当たり前の世界でした。小さい頃から、祖母などから「酒屋を継いでやるんだよ」と言われて育ったため、皆さんのような就職活動は一切したことがありません。
父が亡くなり酒屋を始めた当初、正直売上はほとんどなく、町のどこにでもある小さな酒屋でした。私は学生時代に野球をやっていました。そのため、「やるからには勝たなくてはならない」という思いがずっとありました。父が死んだ後は、とにかく売上を上げることしか考えていませんでした。当時は会社というよりも個人商店としてずっとやっていました。食事は家で飲んで食べていたとはいえ、はっきり言って常にお金がない状態でした。
酒屋を続けながら、いずれ今の事業では立ち行かなくなると予見していました。40年前の時点で、酒屋に将来はないと、なんとなく感じていたからです。とりあえずある程度、売上を大きくし、一生生活できるだけの基盤を作らなければならないと思っていました。会社として設立したのは、38歳の時、たまたまご縁があり会社組織であった別の酒屋さんを買収(M&A)したことがきっかけでした。大きな転機は、業務スーパーとの出会いです。これをきっかけに事業転換を果たし、現在の会社の形に至ります。
取材担当者(石嵜渉)の感想
売上がほとんどない状態から「勝つ」ために結果にこだわり続けた経営姿勢が印象的でした。40年前から酒屋の限界を予見していた先見性と、偶然の出会いをチャンスに変える行動力は、主体的なキャリア形成の重要性を教えてくれます。


経営者に必要な「スピード感」と「答え」への執着
事業の規模を短期間で拡大できた要因には、色々なご縁が絶対にあったと考えています。それを特に感じたのは、創業期に新店舗をオープンしたわずか5日後に、次の新店舗の話が持ち込まれ、即座に「やります」と決断したことでした。小さい酒屋が一つ店を開店した直後に、次の買収話に「はい、やります」と乗る機会は、人生においてそう多くはないかもしれません。その時の瞬時の決断力が、成長の鍵でした。
私の経営哲学の根幹は、「答えを先に考えとけ」という考え方です。問題が発生してから解決策を考えるのではなく、常に複数の可能性を想定し、事前に「答え」を用意しておく。問題が出たら即決することが重要です。長く考えたから正解の答えが出る、すぐ決めたから間違いの答えが出る、ということはありません。
「お尻の重たいやつは仕事ができない」と私は思っています。すぐに動くことが大切であり、これは若者であろうが年配であろうが一緒です。行動が遅い子はだめだとよく言います。社会人として成果を出す上で重要なのは、学生が重視する「プロセス(過程)」ではなく、「アンサー(答え)」しかありません。
言い方は悪いかもしれませんが、頑張っていることはどうでもいいことです。トップや経営者は特に、頑張るのは当たり前であり、結果を出すのが義務です。結果を出さないといけません。その頑張りが自分目線なのか会社目線なのかは分かりませんが、答えを出すためにどう行動すべきかを常に考えなければなりません。
取材担当者(石嵜渉)の感想
「答えを先に考えとけ」というアドバイスは、学生が社会人になった時に直面する「プロセスと結果」のギャップに対する具体的な指針となるでしょう。このスピード感と先見性が事業発展を支えてきたのだと強く感じました。


若者へのメッセージ:失敗を恐れず主体的に行動せよ
若者には、「いっぱい失敗したらいい」と伝えます。若いうちであれば失敗しても挽回が可能であり、早い段階で多くの失敗から学ぶことが重要です。
私は、若者に対して「どうなりたいか」を考えることの重要性を強く訴えます。人生は誰のものでもなく、全て自分の人生です。自分が将来なりたい姿を思い描き、それに向かって邁進すべきです。よくお金持ちになりたいという方もいますが、お金持ちになりたかったら、人並み以上に働かなければいけないし、人一倍考えなければなりません。人と同じことだけやって、人並み以上に良くなることはありません。
成功やチャンスを引き寄せるためには「絶対動かないとダメ」だと断言します。他人から押されてきっかけを得ることはあっても、第一歩を踏み出すのは自分自身の意思です。止まっているということは、成長がないことだと思っていいでしょう。動かなければチャンスは出てきません。自分自身と真剣に向き合い、計画的に行動することが求められます。
取材担当者(石嵜渉)の感想
「いっぱい失敗したらいい」というアドバイスは、学生が抱える失敗への恐れを打ち破る力強いメッセージです。厳しい状況を乗り越えてきたからこそ、主体的に動かなければチャンスは巡ってこないという言葉に説得力があります。


会社を支える「人との繋がり」と挑戦への覚悟
お客様から長年の支持を得ている強みは、やはりお客様を大事にするという基本姿勢です。単に商品を販売するだけでなく、「また来たいな」と思ってもらえる店づくりが重要です。今の経済状況では、お客様が安い商品を求めるのは当然のことですが、その中でもお客様との関わりを粗末にしてはいけません。
私は、必ずしも丁寧すぎる言葉遣いである必要はないと考えています。「お母ちゃん、晩御飯何すんのん?」といったように、お客様との距離を縮め、親近感を生み出すことが大事です。うちの会社の理念にも書いていますが、「人と人との繋がりを大切に新しいことに挑んでいく」。これが一番大事な要素です。
一方で、業務スーパーや自社生鮮ブランドへの展開など、常に新しいチャレンジを続ける背景には、冷徹な経営判断があります。今の世の中の経済情勢などを考えた時に、会社としての利益や成長を確保しておかなければ、最終的には自社が生き残れない。他人は助けてくれないからこそ、自分で自分を守っていくために能動的に動き、事業の柱を強化し、新しいことに挑戦し続ける必要がある。
また、新しいチャレンジについてですが、私はもうすぐ70歳になるのでSNSなどの詳細は分かりません(笑)ただ息子である専務や、若い社員が積極的に取り組んでくれています。しかし、「やりたいけどやり方がわからん」というのは、結局言い訳です。本当にやりたければ、自分が全面的にできなくても、やれる人間にやってもらえばいい。それはやる気がないことの裏返しではないか、と自分に問いかけます。
取材担当者(石嵜渉)の感想
顧客との心の距離を縮めるコミュニケーションを重視する文化が強さの源だと感じました。「やり方がわからない」を言い訳と断じる言葉には挑戦への覚悟が込められています。世代を超えて「人」を活かす姿勢が印象的でした。
