株式会社ドゥ・ワン・ソーイングは、1952年に創業したオーダーシャツのリーディングファクトリーです。70年以上の歴史で培った商品企画力と膨大な体型データを武器に、国内外の一流ブランドを支えています。熟練の職人技と最新設備を掛け合わせた「究極の小ロット生産」を強みに、国内オーダーシャツ市場でトップシェアを誇り、ニューヨークにも拠点を構えて日本のものづくりを世界へ発信しています。

偶然の縁を「正解」に変える力
私がこの会社に入社したのは12年前のことです。当時は岡山県内にある別の縫製工場で営業と生産管理を担当しており、今の会社はたまたま生産依頼の相談に来られた取引先候補の一つでした。その打ち合わせの際、相手方の担当者から唐突に「生年月日を教えてほしい」と言われたことが、私の人生を大きく変えるきっかけとなりました。
実は当時の採用基準には姓名判断のような要素が含まれており、私の結果が非常に良かったそうです。翌日に「君個人と仲良くしたい」という異例の連絡をいただき、熱心に誘われました。直感的にこの縁を大切にすべきだと感じ、入社を決意しました。
入社後は東京で5年間の営業を経験し、現場のニーズと市場の動向を徹底的に学びました。その後、ものづくりへの情熱から岡山工場へ異動し、工場長として若手中心の組織づくりに邁進してきました。2025年6月に副社長を拝命しましたが、常に「皆さんに勉強させていただく」という謙虚な姿勢を忘れず、現場の声に耳を傾け続けています。
取材担当者(石嵜渉)の感想
驚きのエピソードから始まったキャリアですが、その裏には誠実な対応とチャンスを逃さない直感力がありました。就職活動において条件面での分析も大切ですが、「人との縁」を信じて飛び込む勇気が天職を引き寄せる鍵になると教えられました。


「個人商店」から「チーム」への変革
副社長に就任して以来、私が最も注力しているのは「インナーブランディング」と「社内インフラの整備」です。当社は実力あるベテラン社員が多い一方で、各部署が「個人商店」のように独立して動き、横の繋がりが希薄という課題を抱えていました。
この状況を打破するため、私は自らが「情報の発信源」であり、すべての話のハブとなることを決めました。誰に伝えていいか分からず停滞してしまう案件をすべて引き受け、適切な部署へと繋いでいく仕組みを泥臭く構築しています。
また、組織の若返りと技術継承も喫緊の課題です。従来の「背中を見て覚えろ」という指導方法では今の若い世代は育ちません。120名を超える社員一人ひとりの性格や考え方に寄り添い、チームで後進を育成できる文化の定着に全力を注いでいます。
取材担当者(石嵜渉)の感想
副社長自らが「社内の御用聞き」として奔走する姿勢に感銘を受けました。組織が大きくなるほど他人事の意識が生まれやすくなりますが、ハブとなって情報の透明性を高めることで、組織全体がチームとして機能し始めています。


究極の小ロット生産で世界を獲る
私たちの事業の核であるオーダーシャツは、一般的な既製品とは根本的に異なる特殊なモデルです。毎日工場で生産されるシャツは、すべて「すでに持ち主が決まっている」一点もの。お客様一人ひとりの体型や好みに合わせた究極の個別生産を実現しています。
現在、国内オーダーシャツ市場でトップシェアを維持し、全国約700社のテイラー様とお取引をさせていただいています。国内市場が成熟しつつある今、ニューヨークを拠点に「メイド・イン・ジャパン」の品質を世界へ届ける海外進出を本格化させています。
海外進出の目的は、社員が「自分たちの仕事は世界に通用するんだ」という誇りを持つことです。岡山の繊維産業といえばデニムや学生服が有名ですが、そこに「オーダーシャツ」を並び立たせることが私たちの大きな目標です。
取材担当者(石嵜渉)の感想
「毎日違うものが流れる工場」という言葉に、オーダーメイドの難しさと尊さが凝縮されています。手間のかかる個別生産を世界基準まで引き上げようとする挑戦心は、次世代の若者を惹きつける強力な魅力になると確信しました。


「自分ごと」で歩む人生の楽しみ方
現代の若者は、スマートフォン一つで膨大な情報にアクセスし、AIを使いこなす「新人類」のような素晴らしい才能を持っています。しかし、あまりにも多くの情報を詰め込みすぎると、頭でっかちになり、本来持っているはずの「直感力」が鈍ってしまう危険性も孕んでいます。ネットで正解を検索する前に、まずは自分の感覚を信じ、最初の一歩を踏み出すことを大切にしてほしいと思います。
私が日頃から社員に伝えている指針は「健康第一」「自分ごと」「企業の認知向上」の3点です。何をするにも体が資本であり、自分自身が健康でなければ人を思いやる余裕も生まれません。そして、周りの出来事を他人事ではなく「自分ごと」として捉え、横にいる仲間のために何ができるかを考える。この意識の持ち方が、仕事の質を高め、自身の幸せにも直結すると信じています。
人生の大半を占める仕事の時間を、単なる「苦労」と捉えるのではなく、いかに「楽しめるか」を常に考えてください。失敗を恐れる必要はありません。若いうちの失敗は取り返しがつきますし、一生残るような後悔にはなかなかなりません。自分の可能性を信じ、主体的に行動することで、皆さん自身の人生をより豊かで生きやすいものにしていってほしいと願っています。
取材担当者(石嵜渉)の感想
「自分を信じる力」と「自分ごと化」の重要性は、正解のない時代を生きる学生にとって何よりの道標になると感じました。情報に振り回されず、目の前の人や仕事に真摯に向き合うシンプルな生き方が、バイタリティの源泉なのだと深く納得しました。
