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2月 22, 2025
【倉本酒造株式会社】蔵を継ぐ決心、日本酒の新時代
◇日本酒業界に飛び込んだきっかけ◇
私は家業として日本酒造りを行う家に生まれましたが、大学進学の際には日本酒に関する勉強ができる学部を選び、将来的に継ぐことを考えていました。しかし、卒業時点で日本酒業界は右肩下がりで、市場規模も全盛期の1/4程度まで縮小していました。そのため、当時は家業を継がず、父の代で酒蔵を終わらせる決断をし、一般企業に就職しました。
社会人として12年間働く中で、次第に「やはり日本酒造りをしたい」という気持ちが強まりました。特に、父がサラリーマンの定年に近づいたころ、「自分が継がなければ、この酒蔵はなくなってしまう」という思いが募り、2015年の冬に退職を決意し、酒蔵に戻ることにしました。
◇事業を再建するまでの苦労◇
酒蔵に戻った時点では、販路がほぼなく、商品数も少ない状況でした。そのため、まずは自分の酒を作り、収益を確保できる状態にするまでに約5年を要しました。もともと当蔵の商売は地元向けの直販が中心で、流通に強みがあるわけではなかったため、新しい販路を開拓する必要がありました。
当初は販路がないことに苦しみましたが、それが逆に良い方向に作用しました。既存の流通に依存せず、新しい市場開拓に専念することができたのです。特に、お酒の専門店への販路を拡大し、そこでブランドを確立することで徐々に認知度を上げていきました。
◇経営者としての信念◇
現在、日本酒市場は縮小傾向にあり、単に流行に乗るだけでは持続的な成長が見込めません。そのため、私はレッドオーシャン(競争の激しい市場)ではなく、ブルーオーシャン(未開拓の市場)を開拓することを意識しています。具体的には、日本酒に馴染みのなかった人々が飲みたくなるような商品作りを目指し、新たな市場を形成することに注力しています。
しかし、現実的には現在の顧客層は日本酒愛好者が中心です。そのため、パッケージデザインや商品コンセプトを工夫し、より幅広い層に興味を持ってもらえるよう努めています。
◇学生へのアドバイス◇
私が今一番困っているのは語学力の不足です。小さな酒蔵ですが、現在5~6か国と海外取引を行っており、自分自身で対応しなければならない場面が多いです。翻訳ツールの活用も可能ですが、細かいニュアンスを伝えることが難しく、直接のコミュニケーションが重要だと実感しています。
学生のうちに語学力を高めておくことは、将来的にどの業界でも役立ちます。また、日本酒の市場は国内だけでなく、海外にも広がりつつあるため、語学を習得することで新たなビジネスチャンスをつかむことができるでしょう。
◇今後の展望◇
今後5年間で売上を倍増させることを目標に、設備投資を進めながら国内市場の拡大と海外市場への進出を強化していきます。特に、国内市場のブランド力を高めることが海外展開の鍵になると考えています。
現在、取引の中心はアジア圏ですが、今後はヨーロッパ市場への進出も視野に入れています。世界に向けて日本酒を発信し、日本の文化としての価値を高めることで、市場全体の活性化につなげたいと考えています。
◇SNSの活用と未来への可能性◇
現代において、SNSは非常に重要なツールです。商品を知ってもらうためには、まず認知度を上げることが必要です。私たちの酒蔵もInstagramなどのSNSを活用していますが、動画コンテンツの発信にはまだ十分に取り組めていません。
若い世代はTikTokやYouTubeのショート動画を通じて情報を得ることが多いため、今後は短尺動画を活用し、より多くの人に日本酒の魅力を伝えていく予定です。また、アニメや他のエンタメコンテンツとのコラボレーションを行うことで、新しい層へのアプローチも模索しています。
◇まとめ◇
日本酒業界は厳しい環境にありますが、新しい市場の開拓と海外展開を視野に入れることで、成長の可能性は十分にあります。また、語学力の向上やSNSの活用など、時代に合わせたスキルを身につけることが、今後の成功につながるでしょう。
就活生の皆さんには、自分のやりたいことを見つけ、それに必要なスキルを磨くことを意識してほしいと思います。どんな業界でも、チャレンジ精神と柔軟な発想が求められます。ぜひ、今のうちにさまざまな経験を積み、自分の可能性を広げてください。