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5月 10, 2025

生涯現役、イキイキ生活を応援する株式会社リハビリホーム一歩

株式会社リハビリホーム一歩グループは、「生涯現役、イキイキ生活を応援する」介護専門会社です。埼玉県を中心に、デイサービスや居宅介護支援事業所、保育園、児童発達支援事業所などを展開しています。特に、デイサービスと保育園を組み合わせた多世代交流の場や、デイサービスを利用する高齢者がお弁当作りを通して社会と繋がる「アクティブ・キッチン一歩」といったユニークな事業を展開し、「すべての人々がイキイキと共生できる社会作り」を目指しています。今回は、代表の阿部裕一社長に、事業への思いや今後の展望についてお話を伺いました。

【今までの経緯・背景】

私自身は元々、理学療法士としてリハビリの仕事をしていました。その中で介護の現場に関わる機会が増え、そこで見た光景がこの事業を始める大きなきっかけとなりました。高齢者になって体が不自由になった方たちが集められ、まるで幼稚園のようなレクリエーションをして過ごし、ただ「なくなるのを待っている」かのような生活が見えたのです。

また、働く側の人たちも、その状況が当たり前になっているように見えました。それを見た時に、「これは何か違うのではないか」「最後まで生き生きと元気に暮らす方法はないのだろうか」という強い思いが込み上げてきました。そこで様々なことを調べていくうちに、同じように考え、実際にそうした取り組みをされている方々がいることを知りました。

そういった方々の話を聞いたり、作っているものを見たりする中で、「自分もこういうことをやってみたい」と思うようになり、14年ほど前に40歳で起業することを決めました。当時、20年前はデイサービスに行きたいという高齢者はほとんどおらず、「あんなところに行かされたくない」という人が多かったのです。そうではなく、「行っても恥ずかしくない」「行った方が楽しい」と思ってもらえるような、「預けられる」デイサービスではなく「行きたい」デイサービスにしたいという思いがありました。

◾ 取材担当:石嵜感想 

理学療法士という専門職として現場にいらっしゃったからこそ見えた、高齢者の方々の現状に対する問題意識が、起業の原点なのですね。ただ「待っている」だけの生活ではなく、「最後まで生き生きと元気に暮らす」という阿部社長の原体験に基づいた強い思いが、事業の根幹にあることを感じました。就活においても、企業の理念や事業の背景にある、創業者の原体験や譲れない思いを知ることは、自分自身の価値観と合うかどうかを判断する上で非常に重要だと改めて感じました。

【苦労されたこと】

会社を立ち上げて現在14期目に入りましたが、これまでの道のりで苦労がなかったわけではありません。仕事そのものの内容で、これが本当に苦しかった、ということは意外と多くなかったように感じています5。常に「次にこんなことをやってみたい」「この先こうなったらもっと良くなりそう」というビジョンがあったので、そこを目指して進んでいくことができました。

しかし、やはり「人」に関する苦労はありました。一緒に働く職員やスタッフとの間で、気持ちが通じ合わないと感じる時は、やはり苦しいものでした。会社を始めたばかりの頃は人数も少なく、自分対スタッフという関係性で会話ができていたのですが、だんだんとスタッフが増えてくると、そうはいかなくなってきます。

スタッフが増えるにつれて、やはり間に立ってくれる人、いわゆる中間管理職のような役割を担ってくれる人が必要になってきます。そういった役割を担える人材をうまく育てていく、ということが大変だった時期はありました。組織が大きくなるにつれて直面する、避けては通れない課題だと感じています。

◾ 取材担当:石嵜感想 

事業を成長させていく上での苦労として、スタッフの方々との人間関係や組織づくりを挙げられていたことが印象的でした。自分の目の前の仕事だけではなく、組織全体を良くしていくためには、コミュニケーションの壁や人材育成といった課題が生まれてくるのだと学びました。特に中間管理職の育成は、組織の要となる部分であり、そこに注力された時期があったということは、会社を強くしていく上で非常に重要なプロセスだったのだろうと想像できます。会社の成長フェーズによって、向き合うべき課題も変化していくのだと感じました。

【事業・業界について】

私たちの事業は、単に高齢者をお預かりする場所ではありません。公式サイトでもご紹介していますが、デイサービスと保育園を組み合わせることで、子どもから高齢者までが「いっしょ」に過ごす多世代交流の場を実現しています。子どもたちの成長に携わり、優しさや思いやりの心を育むと同時に、それを見守る高齢者の方々も子どもたちの笑顔から元気をもらい、そこに居場所や役割を見出すことができるのです。

また、「アクティブ・キッチン一歩」では、デイサービスの利用者がお弁当作りを通して「お仕事」に挑戦しています。体が不自由でも、認知症があっても、やる気さえあれば誰でも挑戦でき、「生涯現役」を目指す取り組みです。こうした事業を通じて、高齢者が社会との繋がりを持ち続け、「誰かの役に立ちたい」という思いを実現できるような場を提供しています。これは働くスタッフにとっても、介護だけでなく保育や調理補助など様々な選択肢が生まれ、毎日が変化に富んで楽しいものになっていると感じています。

日本の介護業界全体を見ると、課題も多くあると感じています。海外、例えばデンマークなどでは「個人の尊厳」を非常に大切にしていると聞きますが、日本では「安全安心」という言葉のもとに、できることまで制限してしまう風潮があるように感じています9。体が不自由になったり、介護が必要になったりすると、そこで「時が止まってしまう」というのが日本の介護の現状だという言葉を聞いたことがあり、衝撃を受けましたが、その通りだと感じています。長期で生きる時代になったからこそ、ただ長生きするだけでなく、楽しんで年を取れる人を増やしたいと考えています。

◾ 取材担当:石嵜感想 

デイサービスと保育園、デイサービスとお弁当屋さんという組み合わせは、まさに「イキイキと共生できる社会作り」を体現する素晴らしい取り組みだと感じました。高齢者の方々が社会との繋がりを失わず、役割や生きがいを持って過ごせる場を提供している点が非常に魅力的です。日本の介護業界が抱える課題を率直にお話しいただき、海外の事例と比較することで、日本の現状と目指すべき方向性が明確になりました。働く側としても、多様な関わり方ができることで、よりやりがいを感じられる環境なのではないかと想像しました。

【今後の展望】

今後の事業ビジョンとしては、単にチェーン展開して店舗数を増やすことには興味がありません。同じものをたくさん作るのではなく、「一つの完成形」を目指したいと考えています。埼玉県の拠点で事業を展開していますが、今後は地方にも一つ拠点を設けてみたいと考えています。例えば、青森県で成功させることができれば、私たちのやり方は日本全国どこに行っても成功する、という証明になるのではないかと感じています。地方の若い方がそこに就職したり、関東の若い方が地方に行って働いてみたり、といった流れも生まれるかもしれません。

また、今は宿泊施設を運営していないのですが、将来的に高齢者向けの宿泊施設を作りたいという考えがあります。これは、職員の親御さん世代(70代、80代)も増えてきており、自宅で面倒を見ることが難しくなってきているという声を聞く中で、何かあった時に安心して泊まれる場所が必要だと感じているからです。

そして、もう少し長い目で見た時、地方での展開がうまくいけば、海外、特に高齢化が進んでいる東南アジアなどでの展開も視野に入れています。海外で私たちのやり方が成功すれば、それはグローバルに通用するモデルであるという証明にもなるでしょう。最終的には、「自分がここで人生の最後を過ごしたい」と思えるような場所を作ることが目標です。そして、私たちが作ったその場所を、他の施設が真似してくれるような存在になりたいと考えています。日本の介護の「時が止まる」現状を変え、皆が楽しんで年を取れる社会を実現したいです。

◾ 取材担当:石嵜感想 

チェーン展開ではなく「一つの完成形」を目指すというお話に、事業に対する強いこだわりと、単なる拡大ではない質の追求を感じました。地方や海外への展開構想も非常に面白く、埼玉での成功モデルをいかに他の地域や文化にフィットさせていくのか、という点に事業の奥深さを感じました。職員の方々の状況も踏まえた宿泊施設の構想や、日本の介護業界への問題提起と海外視点の重要性についても、今後の展望を考える上で大変勉強になりました。ご自身の人生の最終地点として「ここで過ごしたい」と思える場所を目指すというビジョンは、働く方々にとっても大きなモチベーションになるだろうと感じます。

【学生へのメッセージ】

私自身が何か特別なことを成し遂げたわけではありませんが、これまでの経験を振り返って学生の皆さんに伝えたいことがあります15…。よく言われることですが、20代のうちはあまり自分の進む路線を決めすぎず、与えられたチャンスにはガムシャラに、何でも食いついてみるのが良いと思います。そうして様々な経験を積む中で、30歳までに「これで勝負してみよう」と思えるものが見つかれば、それはもう成功と言えるのではないでしょうか。そして、30代は腰を落ち着けて、30代の生き方でその後の人生が決まる、という先輩からの言葉が今も心に残っています。

私自身、一度社会人になってから26歳で理学療法士の学校に入り直し、30歳で新人としてスタートしました。周りは22歳の子ばかりでしたが、患者さんは30歳という年齢でベテランだと思ってくれるので仕事はやりやすかったですし、それまでの社会人経験があったからこそ、患者さんの経歴の話などを聞いても対応できた、という良い面がありました。どこでの経験が将来どう生きるかは本当に分からないものです。

また、自分の夢や目標、考えていることを周りの人に話すことは非常に大切だと思います。私は独立したいという思いを色々な人に話していたのですが、本当に嘘のような偶然で、たまたま訪れた居酒屋で隣に座った人が市議会議員さんで、介護への問題意識をぶつけたことがきっかけで応援してもらえることになったんです。石嵜さんのように、「何になりたい」と話していれば、その夢を知っている人が「こんな若者知ってるよ」と繋げてくれるかもしれません。今うまくいかないからといって自分をダメだと思わず、長い目で見てほしいですね。失敗を恐れず、無駄なことなんてないという気持ちで、様々な経験を積んでいってください。

◾ 取材担当:石嵜感想 

阿部社長からのメッセージは、まさに今就職活動をしている私自身にとって大変響く内容でした。特に、「20代はガムシャラに何でも挑戦してみる」「30歳までに勝負するものを決める」というキャリアの考え方や、その後の人生を左右する30代の重要性について、自身の経験を交えてお話しいただけたことは大きな学びです。また、「自分の思いや夢は人に話すこと」の重要性については、実際に偶然の出会いが事業に繋がったエピソードが説得力があり、私も積極的に周りの人に自分の考えや目標を伝えていこうと思いました。失敗を恐れず、一つ一つの経験から何かを学び取ることの大切さも改めて感じさせてくれるメッセージでした。