https://goat-groups.com/wp-content/uploads/2025/04/messageImage_1745974250056.jpg

4月 30, 2025

【白石雛具株式会社】 雛人形に新しい風 白石 大地氏インタビュー

はじめに
静岡県静岡市に本社を構える白石雛具株式会社は、雛人形・五月人形を中心とした節句人形の製造卸販売を手掛けている老舗企業です。日本人形協会会員節句人形優良店として、全国の一流専門店や大手有名問屋へ製品を提供しており、その品質と時代に合わせた製品開発力で業界を牽引しています。独自のローコストオペレーションを実現しながらも、伝統を守り、家族の想いを次世代へ繋ぐ大切な文化を支えています。

今までの経緯・背景
元々、実家の事業を継ぐことは考えていませんでした。大学を中退後、アメリカに留学し、その後は就職することを考えていました。30歳を前にキャリアについて深く考える中で、コンサルティングファームでの激務を通して、当事者として経営に携わりたいという思いが強くなりました。PwCというコンサルティングファームで25歳から5年間勤務し、管理職も経験しましたが、プロジェクトの繁忙期には連日深夜に帰宅し、朝早くに出勤するような生活を送っていました。
30歳手前で転職も考えましたが、最終的には自営業を営む父の背中を見て育ち、また長年会社を支えてくれている従業員への恩義も感じていたことから、実家の会社を継ぎ、経営者として新たな道を歩むことを決意しました。当時は、アドバイスをする立場ではなく、事業を推進する当事者として、自分の力で会社を成長させたいという強い思いがありました。30歳までに結婚したいという個人的な目標も重なり、地元である静岡に戻り、家業を継ぐという道を選びました。
実家に戻ってすぐに新しいことに取り組むのではなく、まずは会社の基盤を安定させ、存続させることを第一に考えました。家業で社長になるという目標を掲げ、様々な業務を経験しながら経営者としての知識と経験を積み重ねていきました。10年弱を要しましたが、着実に社長の座を引き継ぎ、その後はコロナ禍といった外部環境の変化にも対応しながら、現在に至ります。新規事業への挑戦も視野に入れつつ、まずは既存事業の維持と発展に尽力してきました。
取材担当者(石嵜)の感想
白石社長のこれまでのキャリアパスは、自身の内発的な動機と周囲の環境との相互作用によって形成されてきたのだと感じました。コンサルタントとしての経験は、客観的な視点や問題解決能力を培う上で大きな糧となった一方で、当事者意識への渇望が経営者への転身を決意させたのだと思います。家業を継ぐという決断には、家族や従業員への責任感、そして自身の成長意欲が強く影響していたことが伺えました。

学生へのメッセージ】
学生時代、そして社会人になってからも、自分の武器となる資格や専門分野をしっかりと身につけておくことの重要性を痛感しています。特に女性は、結婚や出産といったライフイベントによってキャリアが中断される可能性もあるため、いざ復帰しようとした際に、専門的なスキルや資格があれば、再就職の選択肢が広がり、自立したキャリアを築きやすくなります。デザインやインテリアコーディネーター、あるいはダンスインストラクターなど、興味のある分野で資格を取得しておくことは、将来の自分の可能性を大きく広げるでしょう。
学生時代には、単なる友人関係だけでなく、互いに尊敬し合い、協力し合えるような仲間作りを積極的に行うべきです。将来、困難に直面した際に、そうした仲間たちの存在が大きな支えとなることがあります。様々な価値観を持つ人々と交流し、高め合える関係を築くことは、社会に出た後の自身の成長にも繋がります。学内外の活動を通じて、志を同じくする仲間を見つけ、ネットワークを広げていくことが大切です。
アルバイトやインターンシップを通じて、様々な仕事を経験することも非常に重要です。製造業からサービス業まで、多種多様な仕事を経験することで、商売の仕組みやお金の流れ、そして働くことの基本を肌で感じることができます。インプットとアウトプットを繰り返す経験は、社会人になってからの働き方の基礎となります。様々な業界や職種を体験することで、自分に合った働き方や興味のある分野を見つけるきっかけにもなるでしょう。
取材担当者(石嵜)の感想
資格取得の重要性、共感し合える仲間作り、そして多様な仕事経験の推奨という三つのメッセージは、学生が将来を考える上で非常に示唆に富む内容だと感じました。特に、資格がキャリアの選択肢を広げるという点は、今後の社会でより一層重要になるのではないかと思います。また、損得勘定のない学生時代の仲間関係は、社会に出た後の貴重な財産となると再認識することができました。

事業・業界について】
当社の主力事業である雛人形・五月人形の製造卸売業は、少子化という大きな外部環境の変化に直面しています。出生数が年々減少している現状では、市場規模の縮小は避けられません。そのような状況下で、毎年一定の売上を維持し、従業員の雇用を守っていくことは、経営における大きな課題です。また、取引先の倒産や廃業、売掛金の回収不能といったリスクも常に存在します。
このような外部環境の変化に対応するため、BtoCのオンラインショップや店舗販売といった新たな販路の開拓にも積極的に取り組んでいます。2013年から始めたBtoC事業は、少しずつではありますが着実に成長しており、新たな収益の柱となりつつあります。しかし、雛人形という商品はリピート率が低いため、常に新規顧客の開拓が重要となります。
取材担当者(石嵜)の感想
少子化という構造的な課題に直面しながらも、新たな販路を開拓し、事業の多角化を図る白石雛具株式会社の取り組みは、変化への適応力の重要性を示唆していると感じました。BtoBとBtoCのビジネスモデルの違いについての説明は、それぞれの特徴を理解する上で非常に分かりやすかったです。伝統産業においても、外部環境の変化に柔軟に対応していく姿勢が不可欠であることを学びました。

今後の展望
今後の事業ビジョンとしては、まず既存の雛人形・五月人形の卸売業と小売業の両方において、業界のトップを目指したいと考えています。売上規模でトップとなることは、この斜陽産業の中で生き残り続けるための必須条件だと考えています。淘汰が進む中で、トップ企業のみが生き残れる可能性が高いと見ています。
そして、もう一つの重要な柱として、新規事業の立ち上げを積極的に進めていきたいと考えています。将来的には二つの新規事業を立ち上げ、3年以内に年商3億円規模に成長させることを目標としています。これは、既存事業の不確実性に対応し、雇用を守るためにも不可欠な取り組みです。一つの事業に依存するのではなく、複数の事業の柱を持つことで、安定した経営基盤を確立したいと考えています。
現状維持に留まるのではなく、常に新しいことに挑戦し、変化を恐れない組織であり続けたいと考えています。従業員とその家族の幸せを第一に考え、関わる全ての人々にとって良い影響を与えられるような会社を目指して、これからも邁進していきます。
取材担当者(石嵜)の感想
既存事業でのトップを目指すという明確な目標と、リスク分散のための新規事業への積極的な挑戦という二つの柱は、持続的な成長を目指す企業の理想的な姿だと感じました。特に、斜陽産業においてもトップを目指すという強い意志は、並々ならぬ覚悟と努力が必要であることを示唆しています。新規事業の具体的な目標数値も示されており、将来への明確なビジョンを感じました。

取材担当者(石嵜)の感想】
今回の白石社長へのインタビューを通して、経営者の視点や考え方を深く学ぶことができました。特に、自身のキャリア選択の背景、学生への具体的なアドバイス、業界の現状と今後の展望についてのお話は、今後の自身のキャリアを考える上で非常に参考になりました。伝統を守りながらも変化に対応していくことの重要性、そして何よりも関わる人々を大切にするという経営理念は、業種を問わず普遍的な学びであると感じました。私も将来、社会に貢献できる人材となれるよう、今回の学びを活かしていきたいと思います。